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東京高等裁判所 平成10年(う)446号

右の者に対する有印私文書偽造、同行使、詐欺、所得税法違反被告事件について、平成一〇年二月一八日長野地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官三浦正晴出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人中嶌知文、同宮澤建治、同徳竹一臣連名の控訴趣意書に記載されたとおりであり、これに対す答弁は、検察官三浦正晴作成の答弁書に記載されたとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、要するに、原判決には本件所得税法違反の動機が被告人の並外れた蓄財欲にあったとするなど量刑に関する事実の誤認や評価の誤りがあり、そのため量刑(懲役一年一〇月及び罰金一億円)が懲役刑に執行猶予を付さない点において重過ぎるものとなっているというのである。

そこで、検討すると、所得税法違反の犯行は、平成三年度から平成六年度までの四年度にわたって、合計一〇億円余の所得を秘匿して合計四億七九六八万八〇〇円の所得税を脱税したものであって、脱税額が極めて多額で、逋脱率が約六三パーセントと高率である上、所得秘匿の方法も巧妙かつ多岐にわたっている。すなわち、病院の自由診療収入、診断書料収入、外来公費申請収入、寮賄い収入、荷物保管料収入、日用品売買益収入その他多くの売上を除外し、親族及び多数のいわゆる准職(治療を受けた後や治療を受けながら病院で働いている者)の給与を架空計上又は水増し計上し、株式を三〇〇名を超える多数の名義に分散して多額の配当所得を除外するなどしている。しかも、被告人はこれらを病院職員等に指示して行わせたばかりか、看護婦に給与支給等に関する口裏合わせを指示し、原審では一部事実に反する弁解をして責任を回避する態度を示していた。

他方、有印私文書偽造、同行使、詐欺の犯行は、精神病院に入退院を繰返していた精神障害者の近親者が障害福祉年金(後に障害基礎年金)等を振込受給する普通預金通帳と印鑑を医療費に充てるため病院に預け、病院がこの預金の一部を定期預金にして保管していたのに、患者が死亡して遺族に遺体と遺品を返戻する際、遺族に残金があることを知らせないで被告人が証書等の保管を続け、一年余り後に二回にわたり銀行から合計四〇七万七四五六円の現金を引き出して騙取したものであって、この点の犯情もまた悪質である。しかも、被告人は、原審でその事実を否認して、納得し難い弁解を繰返し、反省の態度が見られなかったのであるから、その責任は重いというべきである。

そうすると、所得税法違反に関し、関係年度分を含めて所得税、消費税についての修正申告をし、本税を完納するとともに、重加算税、過少申告加算税及び延滞税を完納したこと、病院において経理面や准職制度の改善を行い再犯防止の処置を採ったこと、被告人の設立した福祉会が建設を予定している精神障害者社会復帰施設の建設資金として一億円を寄付したこと、被告人はこれまで三〇年以上地域の精神医療に貢献してきたこと、詐欺等に関し、病院と被害者の遺族との間に示談が成立し、被害金相当額が支払われて被害が実質的に回復していることなどの原判決が指摘する被告人のために酌むべき事情に加え、第一審判決後、右社会復帰施設の運営資金の不足に充てるため一億円の追加寄託をしたこと、詐欺等について事実を認めて反省の態度を表わし、被害者の遺族も宥恕していることなどの事情を十分に考慮しても、被告人を実刑に処した点を含め、原判決の量刑が重過ぎて不当であるということはできない。

所論は、所得税法違反の動機につき、病院経営や准職のためであったと主張するが、脱税した資金を病院の施設経営や准職のために使用したとみるべき証拠はなく、現実には被告人が巨額の脱税額を預貯金等として所有していたのであるから、所論は失当である。

所論はまた、本件各犯行の背景には、精神医療施設が不十分であるという問題、処遇困難な患者を受け入れない精神病院の問題、患者らを厄介者として扱う親族や社会一般の問題、更に金の集まる精神病院に預金の勧誘を行う金融機関の問題等があったと主張するが、本件各犯行が右の特殊事情に起因するとみるべき証跡は見当らない。

その他所論を検討しても原判決の量刑が重過ぎると認めるべき理由がないので、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 香城敏麿 裁判官 北島佐一郎 裁判官 平谷正弘)

控訴趣意書

被告人 倉石文雄

右の者に対する有印私文書偽造・同行使、詐欺、所得税法違反被告事件について、控訴の趣意は左記のとおりである。

平成一〇年四月二〇日

主任弁護人 中嶌知文

弁護人 宮澤建治

弁護人 徳竹一臣

東京高等裁判所第一刑事部 御中

第一 原判決は、被告人を懲役一年一〇月及び罰金一億円に処している。しかし、その認定する量刑の事情には事実の誤認や評価の誤りがある。本件で被告人にとって有利な諸事情を総合すれば、原判決の右量刑は、とりわけ懲役刑に執行猶予を付さなかった点で重過ぎて不当であり、破棄を免れない。本件においては、被告人に対し、社会内更生の機会を与え、被告人の精神医療に対する実践を通じて、社会に貢献させることが、適正な量刑であると信じる。

そこで以下には、原判決が量刑不当(法三八一条)である理由を述べるとともに、被告人の刑の量定にあたり大きな影響を及ぼすと信ずる第一審判決後の事情について述べる。

第二 量刑不当(法三八一条)

1.本件は、医師による他の脱税事件と異なり、診療報酬等の公的資金を不正受給し、その所得を免れたという事案ではない。

この点、原判決は、右の点については、量刑の事情として全く斟酌していない。しかしながら、自らに帰属しない公的資金を収入除外した場合と自らに帰属するべき収入を除外した場合とでは、自ずと量刑に差異があって然るべきである。しかも、被告人は、後述するように右収入を自身の私利私欲のために一切使用していない。被告人の生活は患者及び准職と病院経営を中心に成立っていたことに着眼して欲しい。

因みに、札幌高裁判決平成四年(う)七号(判例時報一四五五号一五七項参照)では、老人保健法に基づき、市町村から支給される付添看護料を不正受給し、三年分の合計で七億六五五四万円に達したという医師の所得税法違反事件においてさえ、原判決を破棄し、被告人を懲役一年六月及び罰金一億円に処した上、四年間の執行猶予を付している。

2.被告人の所得税法違反事件の動機

本件では、被告人はその秘匿した所得をほとんど預金するという形で貯蓄し、被告人自身及びその家族のために一円たりとも使っていない。仕事人間の典型であった被告人は、より充実した精神医療のための設備の拡充にのみ関心があったことに最大限の注意を払って欲しい。

原審では、被告人は、所得税法違反の動機として、病院経営の裏金の必要性、病院の増改築費の必要性、准職(社会復帰をしようとしても受入れ先のない不完全寛解の患者)の将来のための蓄財の必要性等と述べていたが、原判決では、「本件は、被告人の並外れた蓄財欲から出たものといわざる得ず、…」と断じてしまっている。

しかし、数億円にのぼる金を蓄財しているには、それなりの理由があるのが自然である。人間は誰しもその所得、家計、住宅ローンの計画、事業の規模、将来の設計等に応じた蓄財をなすものである。被告人が、数百万円という単位ではなく数億円という単位の蓄財をしたのは、その額に応じた規模の必要性があったからである。そして、その必要性とは、正に被告人の病院及び患者、准職らのために必要な資金であったのである。

この点、原判決では、「…これまで、格別准職らのためにこれらの金を使用した事実は窺われず、…」としている。しかし、被告人は、昭和三七年に栗田病院を開設して以来、逮捕時は、ベッド数七二〇床、入院患者約七二〇名、医師一七名、看護婦一二八名、薬剤師八名、その他の職員八〇名、准職約一二〇名、病棟三棟、デイケアセンター一棟という県内では最大規模の精神病院を経営し、自らも全患者の診察にあたってきた。その過程において、病棟の増改築、准職の居住する寮の確保等の費用に巨額の資金を支出してきたことは容易に推測できるのである。

この点、長年、栗田病院の事務長の職にあった倉石公雄によれば、「栗田病院は、昭和三七年一一月に、ベッド数三〇床で開業しましたが、入院患者が退院した場合、必ずしも家族が引取ってくれないということや、退院したとはいっても、精神病の特質から引続き治療を必要とする患者もいました。そこで、院長の考えで病院で用意した寮で生活しながら病院の炊事や洗濯、入院患者の介助など、病院の手伝いをしながら、外来で治療もするという准職の制度がはじまったのです。」(甲一八五号証二〇項)、「これらの口座は、昭和五七年から昭和五八年にかけて開設されていますが、昭和五〇年代半ばから後半にかけては、清水寮、倉石寮をはじめ准職の入る寮を増やしていった時期であり、当然のことながら准職の数が増えていった時期ということになります。…」(同号証二六項)、「院長は毎日病院の中で准職の様子を見ていますし、栄養室の職員にも、准職が欠勤したり何か変わったことがあったら直に俺に言ってこいと言っているので、准職の働きぶりや欠勤状況などは把握しているはずです。院長は、准職の働きぶりなどを参考にして、三万円のうちいくらを本人に渡すか決めているのであり、それが「本人休みなし」なのです。」(甲一八三号証一六項)と供述している。

また、本件犯行の原因の一つに、被告人のワンマン経営があげられるが、反面、被告人は「朝四時前から起きて病院の仕事をして三五年間、本当に病院一辺倒の生活をして」(倉石和明証人尋問調書二丁裏から三丁表)いたことや、「当時、入院患者七五〇名余りいたんですが、その人たちのすべての症状、病歴、それから外来患者のすべての症状、病歴も把握しておりました。うちの父はとにかく三六五日、良くも悪くも患者本位、病院本位の生活を送っていたことだけは間違いありません。」(前同)等とあるように、被告人の生活のすべては、病院を中心に成立っていたのである。

県の補助金が拠出されることが内定し、被告人が一億円を寄付している精神障害者社会復帰施設(弁一二号証、検察官検事白濱清貴の平成一〇年二月一七日付電話聴取書)も、もともと、被告人が本件逮捕時以前から構想を練っていた施設であり(倉石和明証人尋問調書一一丁表)、被告人の逮捕時には、既に、デイケアセンターの建設が始まっていた(弁五号証三3.)ものである。更に、被告人は数億円の寄付をして社会福祉法人長野南福祉会を設立し、痴呆老人専用の老人ホームを運営してきてもいる(倉石和明証人尋問調書一〇丁表)。

被告人が蓄財のための蓄財をしてきたのではないことだけは、斟酌されてしかるべきである。

3.被告人の反省態度

この点は、原判決が、有印私文書偽造・同行使、詐欺の犯行について、「…反省の態度が窺われないところ…」とし、所得税法違反の犯行について、「必ずしも十分に反省しているとは言い難い状況にある。」と評価していることを被告人は真摯に受止めなければならないところであるが、後記第三、第一審後の刑の量刑に及ぼすべき事情の存在の段階において詳述するとおり、被告人は、原判決後、有印私文書偽造・同行使、詐欺の犯行についても犯行を全面的に認め、被害者の遺族代表者に対し、謝罪するに至っている。但し、被告人が約三〇年間にわたって日常生活をともにしてきた徳重文男との間には、一般人には理解されがたい意思の疎通があったこと、被告人はそれだけに有印私文書偽造・同行使、詐欺の犯行については、犯行を認めることに抵抗があったことは付言しておく。医師として約三五年間、朝から晩まで世間から隔離された世界で患者と過してきた被告人は、患者と特殊な信頼関係が生じていたのである(第五回公判、被告人供述調書参照)。

4.被告人はこれまで三〇年以上地域の精神医療に貢献してきたこと

この点、原判決においても「酌むべき事情」とされてはいる。しかしながら、他方では、「精神病院に入院中の患者の年金収入や小遣等の管理については、病院側に委ねざるを得ない状況にあるところ、かかる現状を悪用してこれらが入金されている預金を不正に取得したもので、精神障害者とこれを治療し社会復帰を助ける医療機関という関係に照らすとき、許し難い悪質な犯行と言わざるを得ない。」とか、「本件詐欺等の犯行及び所得税法違反の犯行が精神病院のみならず医療に従事するもの一般に対する国民の信頼を大きく損なうものであることはいうまでもなく、その社会的影響は大きい。」と断じている。一般論としては、そのとおりであるが、原審は、本件犯行の特殊な背景事情を看過している。

すなわち、本件犯行後も栗田病院においては、収容を希望する精神患者の親族や准職の寮の廃止に伴い受入れ場所がなくて困惑している准職及びその親族が数多くいる。現に、原審においても弁九号証で申請したが不同意になった患者及び准職、それらの親族らの総勢三八〇名にのぼる嘆願書が提出されている。

被告人の詐欺等及び所得税法違反の犯行は精神患者を身内にもたない人々からみれば、許し難い犯行であることは間違いない。しかしながら、詐欺等の実質的な被害者の遺族である徳重昌志の供述によれば、「院長先生については、私個人としては、別に憎いとも恨んだりとかそういう気持はありません。」(第三回公判、同人の証人尋問調書二三丁表)とし、被告人が詐欺した四、〇七七、四五六円について、「まあその状況で、まだはっきりは気持ちの整理が付いておりませんけれども、あえてそれを全額を返せとかそういう気持はもってございません。」(同二三丁裏)、弁護人の「弟さんにお金が残っていたとしても、病院に対する言わば迷惑料として、金額の多寡についてはあるかもしれないんですけれども、お金の返還を求める気持はなかったというふうにお聞きしていいですか。」という問いに対し、「はい。」(同一七丁裏)とし、被告人の詐欺等の犯行について、被害届は出していない(同一四丁裏から一五丁表)と証言していることからもわかるように、もともと被害感情は強くないのである。それは、良くも悪くも、精神患者、准職及びそれらの親族らは、被告人に対してお金の問題も含めて丸抱え的に精神患者や准職らの世話を委ねていたという背景があるからである。

そして、准職ら自身も栗田病院において、軽作業に従事していたことが、苦痛であったわけではなく、むしろ自分の生きがいを感じる居場所として必要不可欠な場所であったと思われるのである。この点、伊原証人は、「今回の件で栗田病院から私の病院に回ってきた准職の人がいます。その患者は家庭に入っていたわけですが、当初は家にいても何もすることがなくて退屈だと言って母親とよくトラブルを起し、私の所によく診察に来ていたわけですが、そのうちに来なくなり、聞いてみるとまた、栗田病院に行って炊事の仕事をしているということでした。栗田病院に仕事で行くようになってからは規則正しい生活をするようになり、母親とのトラブルもなくなったようです。ですから、准職という制度は、患者の処遇という点ではまずい面があったかもしれませんが、もう一歩深く掘下げて考えてみると、患者、家族の深刻な問題を解決していたのではないかと思います。」(第四回証人尋問調書四丁)と証言している。

被告人の本件犯行は、確かに、社会的影響は大きかったかもしれない。しかし、倉石和明氏が「たまたま脱税事件を契機に精神医療の難しさが社会問題となりましたが、何故いままで、表に出なかったのでしょうか。理屈では通らない家族の問題、偏見…さまざまな問題があり、他の精神病院では、後々問題となるのを嫌い、処遇困難な患者の入院を拒んでいるのが現状です。」(弁一三号証)と述べるように、被告人の本件犯行は、被告人自身に問題があったとともに、精神医療施設が不十分であるという行政の問題、処遇困難な患者を受入れない精神病院の問題、患者らを厄介ものとして扱う親族や社会一般の問題、更に金の集まる精神病院に預金の勧誘を行う金融機関の問題(甲五五号証、同二八一号証乃至二八三号証、同九四号証、同一九五号証)等が複雑に交錯しているのである。そのような本件犯行の背景にかんがみた場合、本当に、被告人に対し実刑という厳しい刑事罰をもって処断することが相当であるか否かもう一度慎重に判断していただきたい。

第三 第一審後の刑の量刑に及ぼすべき事情の存在

一 原判決後、被告人は、一審においては、犯行を否認していた詐欺等の犯行を認めるに至っている。

それは、原判決を真摯に受止めようという態度の表れであるとともに、原判決後、医師としての倫理に反した行為であることを冷静に振りかえる時間が与えられたこと、長男和明との病院経営をめぐる葛藤のなかで、弱冠三三歳の長男和明が新院長として病院の信頼回復に奔走している態度に自らも反省した点が多かったことによるものである。

二 そして、原判決後、被告人は弁護人を通じて詐欺等の犯行の実質的な被害者である徳重昌志、同幸男氏らに自己の心情を吐露した手紙を手渡し、その結果、徳重昌志氏から「…倉石文雄さんを全面的に許して上げたいと思います。…倉石さんには今後とも精神医療発展のためにつくしてほしいと思います。…」との東京高等裁判所宛の上申書を弁護人が預るに至っている。

三 原判決後、倉石和明氏が理事長を務める長野南福祉会が建設を予定していた精神障害者社会復帰施設(弁一二号証)につき、先述のように、長野県からは、三〇〇〇万円の補助金の拠出が内定していたが、厚生省は、「事件の病院に簡単に補助を認めていいものか」(信濃毎日新聞平成一〇年三月二八日朝刊記事)との判断から、本年六月頃まで、右施設に対する国の補助金六〇〇〇万円の拠出の決定の判断が留保されることとなった。長野県が、補助金拠出を内定したのは、「北信地方には、まだ、援護寮がない。赤字も予想される福祉施設に新たに取組むことにはペナルティを引受ける姿勢が感じられる」等(同新聞記事)の判断からであるとされているが、国からの補助金拠出が見送られれば、長野南福祉会は自己資金のみで、右施設を建設・維持して行かなければならないことになる。

しかし、長野南福祉会はたとえ、行政からの補助金が拠出されなくとも、右施設を建設・維持して行かなければならない状況にある。そこで、被告人は、行政からの補助金が拠出されない場合にも、既に同福祉会に寄付している金一億円(弁一二号証の二)に加えて、金九〇〇〇万円の寄付を申出ていることに加えて、赤字の予想される右施設の運営資金不足額すべてについて、被告人の自己資金を寄付することを申出ている。控訴裁判所が必要とされれば、右申出を実効有らしめるために公正証書等に証拠化する用意がある。

四 原判決後、被告人の医師としての社会復帰を熱望する嘆願書が原審における規模を大幅に越える数で集ってきている。

五 被告人の健康状態は、悪化している。被告人は原判決の言渡された前日である二月一六日に被告人の実兄であり、被告人の精神面の拠所であった倉石慶治郎氏を心臓病で亡くした。同人は、被告人の精神面の拠所であった。その精神的痛手が被告人の健康に重大な影響を与えている。

被告人の父方の家系は代々、心臓疾患の持病をもつものである。被告人の実兄及び被告人も環境の変化による不整脈が頻発する症状が有った。診断書(提出予定の弁第一八号証)によれば、被告人の病名は心室性期外収縮とされ、「昭和五七年より内服加療中」であったところ、現在は、「…自宅安静が必要である。」と診断されている。現に被告人は、勾留中、幾度も不整脈の症状を訴えているところでもあり、再び、環境が著しく変化する事態となれば、被告人の実兄と同様、生命の危険さえ生じかねない。

六 以上の事実を立証するため、被告人質問の機会を求めるとともに、以下の書証の取調べを求める。

1.弁第一四号証 被告人から徳重昌志、同幸男に対する謝罪文

2.弁護一五号証 上申書(徳重昌志)

3.弁第一六号証 新聞記事及び被告人の社会福祉法人長野南福祉会に対する寄付にかかわる書証

4.弁第一七号証 嘆願書

5.弁第一八号証 診断書(平成一〇年四月一〇日付、日本大学医学部付属板橋病院、胸部外科医師八木進也作成)

以上

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